TPPの気になる動向 2015年まとめ

TPP

日本の食や農を考えるにあたって、皆さんが最も気になるのが「TPP(環太平洋経済連携協定)」の話題ではないでしょうか。

5年以上もの間交渉を繰り返してきたTPPですが、今年ようやく大筋合意に至りました。
今回のTPPの発足によってなされる貿易や投資の自由化が、日本の食、そしてそれを支える農業にどういった影響があるのか。私たちの生活に直結するその問題が、大きな関心を集めています。

2015年も暮れようとしているこのタイミングで、TPPの動向を食と農業にフォーカスしてまとめてみました。

TPPのそもそもの懸念点とは

TPPが農産物に及ぼす影響について、農林水産省は「影響は限定的である」という見解を述べていますが、
長期的には価格が下落する可能性があるともしています。
価格の安い輸入物が流れ込めば、農産物の生産の減少、ひいては食料自給率の低下をまねく大きな問題なのです。

そのため、品種改良や経営安定、付加価値向上のための支援などを含めた、農業における輸入品に対する競争力の強化が今後の課題とされています。

政府は「攻めの農業」を掲げ、農業の支援を進めていく方向です。

10月の大筋合意をうけて

農林水産物の中でも特に影響が懸念されているのが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料の5項目です。
農林水産委員会は政府に対して、これらの将来的な生産が維持できるよう、関税撤廃の対象から外すことなどを求めてきました。

2015年10月5日、TPP交渉は大筋合意に達したという声明が各国の共同会見で発表されました。
安倍総理大臣は大筋合意を受けた記者会見で、重要品目を関税撤廃の例外とすることができたとし、国内農業への影響を最小限に抑える考えを示しています。

大筋合意によって各国による協議から、いよいよ発効への手続きのフェーズへと移りました。

重要項目の抜粋

コメ

関税は維持するが、無関税の国別輸入枠が新設。
当初3年はアメリカから5万トン、オーストラリアから6000トン。
段階的に増やし、13年目以降はアメリカから7万トン、オーストラリアから8400トンを輸入。

小麦

アメリカ、カナダ、オーストラリアに輸入枠を新設。
当初は計19.2万トン、7年目以降は25.3万トンに。
関税は維持するが、国が輸入して製粉会社に転売する際に上乗せする「マークアップ」と呼ばれる事実上の関税を発効から9年目までに45%削減とする。

牛肉

関税を38.5%→27.5%へ引き下げ。
その後段階的に引き下げ、16年目以降は9%に。

豚肉

低価格帯のものは482円/1kgを125円に引き下げ。
その後段階的に引き下げ、10年目以降は50円に。

乳製品など

乳製品の輸入を制限する枠組みは保たれたが、バターと脱脂粉乳は新たな輸入枠を新設。
6万トン、6年目以降は7万トンへ。

TPP参加国中、日本は農林水産物など関税撤廃の例外となっている品目が多いため、協定に例外規定が設けられ、
要請があった場合に再協議を行う仕組みも盛り込まれています。
そのため、関税の更なる引き下げを求められる可能性は含んだままです。

TPPの発効はいつ?

気になるのはいつからTPPが発効するのかというところでしょう。
発効には、全参加国が署名後2年以内に国内法上の手続きを終えるという基本条件がありますが、
それができない場合でも、「参加12ヶ国のGDPの85%以上を占める6ヶ国以上が国内手続きを完了」すれば、発効できるというルールも定められています。

実はアメリカでTPP参加国の総GDPのおよそ60%、日本で18%を占めるため、日米の国内での承認が絶対条件となっています。
日米ともに国内では審議が紛糾が予想されるため、発効時期は2016年以降という以上は不透明なままとなっていますが、各国の早期発効に向けての動きは加速していくものと見られます。

発効までのカウントダウンの間、生産者・消費者ともに、どのようなことを考え準備しておくべきか、各々が考えておく必要があるでしょう。